一回生のうちは何となくお客さん扱いというかとにかく優しくしてもらっていたが、時間が経つにつれてそれはなくなっていった。田舎から出てきて30名近い男所帯での生活はやはり大変で体はみるみる小さくなり、全く勝てなくなってしまった。伊東さんは勝負に関してはシビアな人。試合で負ければ誰よりも悔しがっていた。ふだんの優しくを間に受けていたらとんでもない目にあう、期待を込めて負けても負けても試合に出してもらっていたが全然勝てず半ば呆れられてしまっていた。
時は過ぎ三回生になった。生活も慣れ、部内では上級生になり環境がかなり楽になり体も戻りつつあった。稽古場では勝てるようになった、あとは試合で結果を出す。心身ともに充実した矢先に今度は膝の怪我。これは偶然ではなく、明らかにその日の稽古で気が抜けていた。自分の責任!
病院で検査を受けたが、幸い靭帯は切れてなかった。その日の夜は伊東さんにご飯食べに連れていってもらった、ボリュームのあるステーキをご馳走になった。悲しかったのに、とても美味しかった。
「いい休息だと思ってゆっくり休めよ」
そう言われ少しホッとした。結果的にこの怪我がターニングポイントになった、人生何が起こるのかわからない。
人間万事塞翁が馬とはまさにこのことだったのだ
写真送りますね