相撲ファン

昨今の大相撲人気は絶大である、私が現役時代の頃には想像がつかなかった。貴乃花が引退し、朝青龍・白鵬が台頭してきた時代、同時に不祥事も明るみになった時期でもあった。死亡事件に端を発し、野球賭博に八百長と力士の信用は失墜した。実際町を歩いていても冷ややかな目で見られていたような気がする。それが今や連日の「満員御礼」なのだから敵わない。強い力士が生まれ、役者が揃ったから?いや違う、相撲のレベルなどとうの昔に落ちている。

正直人を育てる人間は中にはいない。ではなぜ人気があるかというと・・・、どの客にどのように売り込めばいいかの術を相撲協会がわかったからだ。今の時代でいえば女性である、相撲女子「スー女」が、相撲の収益を支えている。ここだけの話だが、一昔前ならば相撲好きな女性はキワモノ扱いされ、「すギャル」などと影で言っていた。男性客が多くを占めていた時代だからそれはそれは目立つ、たいしたかわいいわけでもないのに、少数だからチヤホヤさせるのだろう。たぶん女性にとっても居心地が良かったに違いない。本物の相撲をみようとしてる人間はほぼいない、お目当ての力士が怪我なく、自分に振り向いてくれればそれでいい。はっきり言えば客の質はガタ落ちした。普段稽古で汗まみれ、泥まみれで必死の努力をしたところで、顔がタイプでなければ人気は出ない。

今の時代、稽古をさぼろうが性格が陰険であろうが、顔さえ良ければそれでいいのだ。本質を見極められない人間が群がってくる世界、だから客受けはよくても肝心なやり手がおらず、相撲人口の減少に歯止めがかからない。だいたいお姫様抱っこやお腹タッチなどの企画自体、力士の地位を貶めている。かつては「相撲取り」と世間で言われ、裸芸人という位置付けをされていた。それをかの横綱常陸山(ひたちやま)が、大相撲の地位向上に尽力し、力の武士という力士という市民権を得たのだ。先人たちが涙ぐましい努力をして築き上げてきたものを今まさに崩壊させようとしている。こんあ悲しいことはない。

かつては力士は神の遣いとされてきた、ただ大きいだけでなくその存在に畏敬を感じていたのである。そしてその力士を取り巻く環境も非常に良き先達がいて、相撲一筋に愚直に生きてきた人間に社会でのマナーなどを指導してくれたのである。

それが今や黄金持ちやら、泡銭を拵えた道楽者が見せ物のように街へ連れて行き、自分の威厳ように周りに見せつけて振る舞うだけ。これでは誰も成長しない、人気が落ちたら見捨てられるのがオチだ。