儀平は祖父のお通夜の最中にいた、数日前に体調崩した祖父はその日の日付が変わってからすぐに亡くなった。
わずか9歳の儀平にとってあまりにも突然すぎて 悲しむ間もなく、頭の整理がつかないでいた。祖父は働き者の寡黙な人物で 、農業に勤しんでいた。夏休みや冬休みなど長い休みになれば、儀平は祖父の家に遊びに行ったが、ほとんど会話した記憶がない。 いつも遠くから農業に従事している祖父の姿を眺めているだけだった。 しかし、かといって冷たい祖父だったかというとそうではない、いつもにっこりと微笑んでくれて見守ってくれている温かな存在であった。
そんな祖父の楽しみの一つが「大相撲」であった。特に農閑期の時はテレビの前に座り、黙々と内職をしながら目の前の力士の姿に釘付けになっていた。