名古屋場所も序盤戦が終わった。蓋を開けてみたら、横綱白鵬と大関照ノ富士が五連勝を飾った。照ノ富士はともかく、この白鵬の成績は一体誰が予想しただろう?はい私です!でも結構曖昧に言いましたけどね(笑)保険なんかかけちゃいけませんね、男だったら、ガツンと言い切らないと!けれども、あの綱打ちの時の写真の体の充実ぶりは目の錯覚ではなかったということ。体だけはね、そう感じたけども。ここ最近ずっと休場続きだったのにあえて綱を新調したこと、普段はしない大銀杏を結っての打ち立ての綱の試着、そして何かを悟ったかのような落ち着いていて少し微笑んでいるあの表情。名古屋場所への自信の表れか、引退の覚悟を決めたのか、これどっちかわからないっしょ?結局は前者だったってことですね。ついにいつもの優勝パターンに入りましたね、さあ昨日の相撲を振り返りますか・・・。
逸ノ城は四日目までの相手とはまるでタイプが違う。とにかくデカく、どっしりくるタイプ。力勝負は避けられないので流石に勝てないだろうと予想していた。まるで寄席の高座で喋っているような語り口調の名(or迷)解説者は、「今日の逸ノ城は表情がいつもと違って眼光が鋭いという類なことを言っていたが、あれはたぶん視力が悪いだけなんじゃない?(笑)まあまあそれはいいか、あの語りで人気があるわけだから、伊達に30年物のビンテージもののジーンズ履いてないっすよ。ダメダメ、メインを土俵の力士に向けないと。白鵬はいつもと同じように淡々と仕切っている、気持ちを熱しすぎず冷めすぎず、自分の枠の範囲内で精神をコントロールしている。所作すべてが、おへその下の丹田を中心に動いている。これは、今の日本人力士にはほとんど見られない(若隆景はそうなっている)。時間いっぱいになって、最後の塩を取りに行く時に一気に気合いを解放する。私は、現役時代にあるプロ野球選手の話を思い出した。バッターボックスに立つ時にガーっと気合いを入れると。頭に一気に気持ちを集中させるらしい、しかし長時間は持続しないのだとか。白鵬は長年の経験で、アドレナリンを放出させる術をマスターしたのか、はたまたいろんなジャンルの第一人者に話を聞いて学んだのか・・・。体の表面に一気に汗が吹き出し、神々しくさえ見える(土俵入りでもそう)。もはや、汗はちゃんと拭きなさいなんて忠告が薄れるくらい、汗で光り輝く姿に魅了されてしまう。あの一連の所作だけで、対戦相手は萎縮してしまうだろう。
さあ立ち合いです、逸ノ城2回突っかける。気持ちがうわずっている証拠、上体に力が入り呼吸を合わせることができない。3回目で成立、白鵬はこの日右四つの立ち合いを見せたが、今場所から多用している慣れない右足からの踏み込みにより、やや立ち遅れる。しかし相四つなのでしっかり組み止め、その後は双差し、上手を切ってあとは一気に寄り切った。それまでの四連勝とは違う、前に出ての「完勝」であった。しかし特筆すべきは、20年近く左足で踏み込んでいたのを、右足に変えたということ。これは、一般人で言えば、お箸の持つ手を変えるくらい大きいことである。怪我のためであるとはいえ、そのくらいの土俵にかける執念にはもはやかなう人間はいないのではないか、そんな思いをさせられる一番であった。
お待たせしました、大関照ノ富士関の話をしましょう。対戦相手の北勝富士がいつも通りの左にズレ気味の立ち合いをしたことで、読みは当たり、なんなく退けた。イレギュラーな立ち合いをして驚かせ、撹乱させればいいと思うのだが・・・。結局まっすぐ当たらないということは、立ち合いの威力は半減。間合いも縮まり、密着したい力士には願ってもないことになる。昨日はそんな相撲でしたね。ただせさえいなしにうまく反応し、万力のようなパワーで引っ張り込むのだから、奇襲でまず仕掛けないと勝機は全然見えてこない。横綱白鵬が「柔」であれば、こちら照ノ富士はさしずめ「剛」といったところか。蓋を開ければこの柔と剛を二大巨頭に、モンゴル人力士が活躍している。今場所目立っているのは、横綱大関以外では逸ノ城・豊昇龍・霧馬山・玉鷲あたりである。他の日本人頑張ってます、でも、インパクト・成績含め彼らに勝っているだろうか?結果だけで判断するのはどうかと思うが、これが現実である。
評論家がこぞって最近の力士は稽古しない、何やっていたんだと言う。力士が叩かれているが、果たしてそれはどうかな?場所が終わるまでは私はこの件は触れません。まだ終わってないわけだし、まだまだ半分以上も残っているわけだから。今は場所のことに集中して書きますか。
最後に、名古屋場所でおなじみの西の花道に鎮座する「白鷺の姉御」こと磯部安江さんは、御年80歳近くになるのに毎日観戦されてますね。そして、対する東の花道に鎮座しているクラブを経営している通称「ビッグママ」もお元気そう。相撲だけでなくお客さんも独特なのが大相撲の魅力でもありますね。