伊東勝人vol.6

 大事な試合の前に自分の不注意で膝に怪我を負ってしまったが、自分自身そんな焦りはなかった。伊東さんのフォローもあったし、ずっと部活漬けで突っ走ってきたから少し休息できるからよかったと開き直っていたからだ。しばらくマワシもつけず、トレーニングルームで大学専属のトレーナーさんに指導してもらいながらできる範囲のトレーニングをした。普段使わない筋肉を刺激するので最初は筋肉痛がきつかったが、慣れてくるとその刺激も心地よく、みるみる身体が変化していくのが楽しくなった。本格的にプロテインも飲むようになり、大きく引き締まった体になった。勉学の方も教職の授業を本格的に受け、スポーツ生だらけの一般教養の授業ではなく、将来教育を目指すであろう一般生と一緒に受ける授業は甚だキャンパスライフを謳歌してるような気分で楽しかった。

相撲部の方は、私が怪我で休んでいる間成績が振るわなく、伊東さんはご立腹だったみたいでハードな稽古をしていた。今だから言えるが正直怪我で休めてよかったと思う。そして、こんな状況の時復帰した時の試合で結果を出せばいいアピールになるとも考えた。幸い伊東さんも私の体つきを見て、「おぉ、プロレスラーみたいな体になってきたな」とご機嫌。7月の石川県の七尾大会が復帰と決まり、俄然やる気になった。

 相撲を離れトレーニングに励んだことで、体を鍛えるバリエーションが増えたこと、一生懸命トレーニングをしトレーナーさんに評価していただきその後のご縁に繋がったこと、いい気分転換になったこと、稽古に復帰したあと体のキレ・スピードが格段に上がりパワーアップも果たしたことでますます自信がついたことなどいいことづくめだった。

七尾大会を翌日に控え、前日宿舎に入った。選手監督皆で晩飯を食べるが旅館の飯じゃおかずが足りない、いつも伊東さんがマネージャーを連れてスーパーに買い物に行ってくれていた。「義之、何食べたい?」「鯛の刺身が食べたいっす」。「おぉ、気合い入ってるなぁ」、前も鯛の刺身を食べてゲンを担いでたのを覚えててくださったみたいだ。食事中も「鯛の刺身食ったから明日は団体優勝だな!」なんて、冗談とも本気とも取れることを伊東さんは言っていたが、いつもならその言葉で硬くなる私はなぜか試合が待ち遠しくワクワクしていた。試合のプレッシャーより、相撲を取れない苦しさの方が勝っておたからだった。

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