大相撲の今後

 名古屋場所も終盤に差し掛かると、大気も梅雨が終わり夏本番に向かいます。お相撲さんの熱気はそのまま気候に連動していく、そんな感じがしないでもありません。あっという間に終わりましたね、今回の場所は私も久々にのめり込みました。偉大な横綱がその身を退くかもしれないという歴史的瞬間を目の当たりにするかもしれないかもと思ったからです。ふふふ、そんな予想は見事に裏切られましたね。相撲ファンの多くがそう思っているのでは?

 周知の通り、横綱白鵬は全勝優勝を成し遂げました。優勝45回、内全勝が15回となったのです。普通の優勝でも15回って多いのに、それが全勝で・・・。6場所休場明けでの優勝は史上初、また一つ記録を打ち立てたのです。進退問題という空気は完全に消え、元の世界、すなわち白鵬を中心とする世界に戻ったような感じです。もっと厳密に言えばピラミッドの頂点が白鵬、次が照ノ富士、その次がモンゴル力士、あとは日本人力士という感じです。今回の場所は白鵬の復活劇、それに追随する照ノ富士の横綱昇進、そのほか逸ノ城やら豊昇龍やら玉鷲などが好成績を収め、新たなモンゴル時代に突入した。そんな感じがしました。

 さて、千秋楽結びの一番を振り返りましょう。7年ぶりの全勝決戦、互いに時間前の仕切りから気合が入っていました。相撲内容、やそれまでの状況から見て私は照ノ富士が勝つと思っておりました。ここ二場所優勝しているということで、実戦経験が豊富。相撲内容もギリギリで勝つということもなく圧勝・完勝できていた。対して白鵬の方は、六場所連続休場明け。ブランクがあり、前半の相撲も安定感がなかった。どちらかと言えば新たに開眼した左四つを多用し、その意外性で対戦相手が対応できず勝ちを拾っていく形で白星を積み重ねてきた。過去のデータなら照ノ富士の有利、けれども仕切りを見てて、そんな気はすぐに失せました。白鵬のなんと落ち着き払った表情、あの大一番の中で綺麗すぎるほどの穏やかな顔をしておりました。私は取組を見るときには相撲だけでなく、時間いっぱいまでの動作も見ています。見るのが好きなんです、長いこと相撲を見ていると動きで調子の良し悪しがわかる・・・ような気がするし、それで勝敗の予想を立てるのが好きなんです。

顔は穏やかで、力みがない。肩に力が入りすぎず、体全体が、おへその下あたり(ここには丹田というツボがある)を中心に動き、力も体全体で均一に入ってるように見えた。心身のバランスが整い、感覚が研ぎ澄まされてるといった感じだ、それは昨日のYouTubeでも述べている。照ノ富士の方は目をギラつかせ闘志剥き出しの状態、まるで獣のようだった。ただ、それまでの取組と違い、目の前の一番に意識しすぎていると思った。明らかに肩に力が入りすぎている、やはり圧倒的実績の横綱を目の前にして、恐怖心が出たのかもしれない。それを必死に覆い隠そうとするのであるが、人間の本能の部分で嘘はつけない。時間いっぱいまでの展開は白鵬に分があるような気がした。

そして時間いっぱい、立ち合い。横綱はなかなか手をつかない、やはり迷ってるのだろうか?軍配が返った!ややふわりとした立ち合いからかちあげを繰り出す、しかし照ノ富士に効かない。動じない相手に感情的になる横綱、激しさが増す。気後れしていた照ノ富士も目を覚ますかのように応戦し始める、やがて右四つがっぷりの体勢に。がっぷりでは確実に白鵬は不利であった、照ノ富士はしめた!と思ったに違いない、しかし同時に白鵬も危ないと悟ったのだろう。渾身の小手投げをこれでもかというくらい思い切り決めて勝利した。ガッツポーズは私は嫌いである、理由なんてない。とにかく嫌いです、けど触れません。とにかくおめでとうございますとしか言えません、本当に全てを出し切った全勝優勝ですね。

 さて、方々で日本人力士は何やってるんだと言われています。同時に横綱への苦言も出ています、ここ何日か私もブログを書いては自分の思いがうまく文字に起こせなくて何回かボツにしました。全てが終わったら見えてくるのではないかと思い・・。日本人力士は何やってるんだじゃなく、力士を指導する立場の人達の真価が問われているのではないだろうか?皆強くなりたい、相撲の最高峰の世界である大相撲で心・技・体を研鑽したいと思ってる。その思いに応える指導ができているだろうか?前に出るなんていうのはあくまで最初の基本の相撲の取り方、ある程度までいけば四つも覚えるなど自分の引き出しを増やしたいはず。私が見る限り、教える側の人間は、当人がやってきたスタイルしか教えない、やらせない。それに反すれば、ペナルティ的な稽古をさせられる、稽古場は怒られないための場と化してしまっている。こうなると、自ら考える思考は萎え、言われた通りしかできない人間になる。

 モンゴル人の力士はこのままじゃ屈しない、譲れない部分は譲れない。曲げられないものは曲げない、密かに自分の技を研ぎ、本場所でいかんなく発揮させる。このままイエスマンで埋もれるか、あえて闘いに挑み自分のスタイル・力で番付を上げて確立させていくか、そのくらいの覚悟で頑張っている。差が開くのはその辺なのではないだろうか???

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