自伝18 初大相撲観戦

 前回までのあらすじ

佐渡ケ嶽部屋の場所中の朝稽古を見学し、憧れの関取衆を目の当たりにしつつも、新弟子の足の青あざを見て現実に引き戻される。稽古終わりにちゃんこをご馳走ちなるが、後ろでお相撲さんに給仕してもらうのが嫌で味がわからなかった。

 ちゃんこも食べ終わり、応接室に通された私と父親と、もう一人の中学生の子とそのお母さんの4人。コーヒーをご馳走になりながら、今日は本場所見るまでにどっか東京観光でも行ってきなさいと先代佐渡ケ嶽親方に言われた。観光よりも眠かったが、車に乗り大都会の街並みを見てるうちにハイになり目は覚めた。マネージャーの方にどこ行きたいと聞かれたが、あれって突然言われるとパッとひらめかないものである。たぶんどの子もそうだったんだろう、マネージャーさんは察したかのように色んなところを車で通ってくれた。国会議事堂、皇居、迎賓館、麹町にあった日テレ前、新宿アルタ前、住友ビル、テレビで見た場所に行けたので嬉しかった。

 程よく観光を終えたところで、いよいよ初の大相撲観戦である。国技館自体は、小学校・中学校の大会で行ってるので慣れたものだが、アマチュアの大会とは雰囲気がまるで違っていた。まず圧倒的に人の数が違う、そしてお茶屋さんが動き回り、華やかさがあった。これが大相撲なんだ!と感動した。

 座ったのは一階の一番奥のロイヤルボックス席。枡席なんかは床に座るが、ボックスはチェアーに座るので楽。テレビで観戦するのとは違い、あっという間に取組は進んでいった。ロイヤルボックス席は、決して安い席ではなく、お隣に座っていたグループはそれなりのお金持ちの雰囲気の人達だった。そして、会話を聞いているとある相撲部屋のことがとにかく詳しかった。案の定、その部屋の当時の部屋付きの親方がわざわざ挨拶に来ていた、そのグループの人達はつまりはタニマチだったのだろう。ロイヤルボックスに座るお客さんはたいていはどこぞの部屋のタニマチかお金持ちと考えてよい。

 あっという間に結びの一番まで全取組が終了した。ただ相撲を見てるだけだったのにとても疲れた、そしてそのまま東京から山形まで電車で帰らねばならなかった。最後に親方に挨拶したが、「元気ないねぇ、どうした?」と心配がられた。

 長旅の疲労、そして、わずか15歳にして、高校行くか、大相撲行くかという自分の人生の岐路に立たされたことで憂鬱になっていた。もう1人のスカウトされた子は帰宅したあと即親方に電話をし、入門しますと言ったらしい。

 私は悩んだが、入門しないことに決めた。

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