早起きは三文の徳か

 年商一億円を稼いでいると言われるEARTHの社長のYouTubeを以前見た時に、朝4時起きだと言っていた。早起きをすると、お金持ちになれますよなんて言うもんだからすっかりその気になって4時起きしているが、至って自分の懐事情は代わっていないように思う。早起きしたから、どこからかお金がチャリンチャリンと落ちてくるわけでもない。つい最近までは騙されたなんて思っていた。

 こういったマインドも身体感覚の歪みからだと思う、こうすればいいという単純な考え方というのはこの世で生きていく上でまず有り得ない。これだ!と思った瞬間に、また新たな壁が出現する。そういった次々に予測不能な困難を一つ一つクリアしていくことで人間として成長していけるものなのではないだろうか?

 私の場合朝起きたらまず洗濯機のスイッチを入れて、歯磨きと顔洗いをする。次に前日洗った食器を片付ける、ここがポイントで我が相撲術をいかんなく発揮し、早朝という家人や近隣の住民がまだまだ夢の中にいる時分にいかに音を出さないで食器を棚に収納するか、自分の稼業の訓練になる。ここで学んだことは相撲術講座のワークショップでお客様に説明できるので、ある意味金持ちへのステップは踏めているかもしれないね。

 その後はトイレ掃除、これはよくトイレをキレイにすると幸運が舞い込むなんて言われてるけど、間違いなく迷信である。トイレ掃除しなくても金持ちな人はたくさんいる。何不自由なく暮らしている人なんてザラだろう、私だって早起きするまではたまーにしか掃除しなかったし、ほとんど家人にしてもらってた。あくまでゲン担ぎの範疇として最初は行っていた。しかしトイレという世界は不思議なもので一日として同じ状況はない、毎日表情が違う。汚れ方が毎日日替わりなの、そして一日掃除しないだけで床なんか埃がたまって大変になる。そういった正直な世界なのだ、まるで生き物のような空間である。排泄する世界だから最初は忌み嫌っていたが、今では愛着が湧いてくるくらいだ。こうした行いをしてると、例えば外に出掛けてキレイな飲食店に行くと、客の立場としては別にやらなくてもいいことまでする。店員さんが少しでも片付ける負担が減るようにするとか、レジのあと一声かけるとか、感謝の気持ちが芽生える。

 トイレはこの世の諸行無常という概念が詰まった空間であるかも知れない、毎日朝の頭がクリアな状態の中それを体感することによって、普段の日常での予想外の出来事にも前よりかは動揺しなくなった。絶対とか、常識とかいうものが取っ払われて、考えが柔軟になってきた。頭だけでなく、体もね、トイレ掃除する時というのは奥まで手を伸ばしたりとかするので動きが柔らかくなるの。あとしゃがむからね、ここにも相撲術は活かされる。トイレ掃除も、直接お金持ちとか目に見えたラッキーを得ることはないが、感謝の気持ちを育む、この世の移り変わりを体感することで人間として大きく成長する可能性を秘めていることは間違いない。こういった説明をする人がいれば沢山の人がやると思うのだが、ここにもこうすればいいのだという簡単な説明しかしないから誰もやりたがらないのでは?

トイレ掃除のあとは、正座をして祝詞、方屋開口故実言上、徳川家康遺訓、般若心経を唱える。正座ははじめ塾という神奈川県小田原市の寄宿舎で、小さな子供達が微動だにせずに姿勢正しく正座してる姿に魅了されたから。祝詞と方屋開口故実言上は、大相撲の世界に14年身を置いておきながらついに暗記することが出来なかった無念さから。徳川家康遺訓は大河ドラマ晴天を衝けを見た時にハッとして。般若心経はやはりはじめ塾の子供達が行っているから。これらを朝一から声を出して言うと、スッキリする。発声練習というか、凝り固まった顔をほぐし、滑舌をよくする、目を覚ます効果がある。人によりけりだろうが、毎日コンスタントに会話するというのは意外と難しかったりする。例えば車の運転の仕事してる人なんか会話はほとんどしないだろう、喋らないと認知症になりやすいなんてことも聞いたことがある。声を発する回数が多ければその分頭の回転もよくなり、冴えてくるのだ。そして声に出すことで各々の意味も理解し、身体に染み込ませる。どれも生きていく上で大事なことが集約されているので常に自分を律することができるのだ。

声を出した後は、相撲の様々な所作をミックスさせた相撲操練法と名付けた動きを深呼吸しながらゆっくりと行う。この辺で洗濯が終了するので一旦洗濯物を干してから、四股を踏む。この四股も世間一般で言われる四股とは少し違う、言っちゃ悪いが普通の四股とはクオリティーが違う。先述した食器の片付けの音を出さないエピソードと似ているが、四股だって普通に踏んだら家人は飛び起きる、マンションの階下に響き迷惑をかけ苦情がくることは必定。だから初めは地下足袋を履いて近所の神社で四股を踏んでいた。しかし、外だと天候に左右される。雨が降れば中止、冬になれば寒すぎてとてもじゃないができない。どうしても毎日コンスタントに四股を踏みたい、そうした想いが形になったのが相撲術式四股である。

 今回は少し書きすぎた、結論から言うと早起きは三文の徳なのだ。現代人にはなかなか理解は得られないかもしれないのでそれはまた次の機会で話したいと思う。相撲術式四股についてもね。

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