照ノ富士優勝

 五月場所は照ノ富士が優勝した。膝の調子は良くないと聞いていたし、2連覇というのはそうそう簡単なことではないからきついのではと思ってはいたのだが、他に候補が見当たらないので彼を優勝候補に挙げていた。最後の最後で、いい意味で予想を裏切ってくれそうな展開になってくれたが、元の鞘に収まった感じになった。 

前から常に思っていることだが、照ノ富士は心身共に普通の人間である。特にハートの部分に関しては一般人と何ら変わりはない。当たり前だが、体は世間一般からするとモンスタークラスである。しかし、お相撲さんの世界じゃ平均より少し大きいくらいなのだ。あの序二段まで落ちていく時の彼の落ち込みようといったらなかった。もう一度這い上がるんだという闘争心は、お世辞にもあるようには見えなかった。

 では、なぜ彼は見事に復活を果たしてきたのか?答えは簡単、伊勢ヶ濱部屋という存在があったからだ。稽古を見る師匠がいる、アドバイスをしてくれる親方衆がいる、何よりたくさんの稽古相手がいる。本当に素晴らしい環境であるが、冷静に考えるとこれは相撲部屋としては当たり前のことである。

今の相撲界はもはやこういった相撲部屋の機能が失われつつあり、伊勢ヶ濱部屋以外の部屋からは強い力士が生まれにくくなってるのではないだろうか?照ノ富士の活躍より、周りの力士が追従できていないことの方が目立つ。皆強くなりたい、けれどそういう環境がない。心身共に自分で工夫して作り上げなければいけない、これはかなりのハンデになる。活気・やる気のない部屋なんていうのは、人一倍自分を奮い立たせ、律していかないと強くなれない。照ノ富士と実力で差が広がりつつある中、精神的ハンデも乗り越えなければならないのならば、なかなか追いつくのは大変であろう。

 私がもう一つ気がかりなのは、照ノ富士が奇跡の復活を成し遂げたヒーローから、憎たらしいほど強いという悪役に世間のイメージが変わってしまうのではないかということ、日本は特にコロっと評価が変わってしまう風潮がある。一生懸命頑張ってるのに、強いというだけで悪者にされてしまったらたまらない。

 こうならないためには、照ノ富士に五分で対抗できる力士が出現しないといけない。善戦するだけではダメ、照ノ富士に勝つだけでもダメ、髙安なんか照ノ富士に分はいいが、他で負けるのでやはり印象が薄い。やはり優勝争いをしないと。それも、複数人いないと盛り上がらない。こうしたライバルがいれば照ノ富士は悪役にならなくて済む、照ノ富士が怪我で休場してる間に優勝したって、もはや評価は上がらないのだ。

 相撲人気継続の為にも、強い力士が必要になる。先場所の最後で貴景勝と遠藤が追い上げてきた時、日本中が湧いた!それが毎回出てきてほしいものである。

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