相撲講座開催

 先日9月2日(木曜日)に横浜市南区南太田にある南センター(南地区センター男女装さんでお相撲の楽しみ方と言う講座をさせていただいた定員30名で緊急事態宣言が発出されたこともあり横浜市から20名に減らすようお達しがあったのだが、それでもこのコロナ禍で大変な時期にほぼ満員の人たちが集まってくださった。これもひとえに、スタッフさんが積極的に賛同して下さり、2ヶ月前から打ち合わせ、宣伝をしてくださったおかげである。このご協力なくして当日はなかった。

私は最近講座では、もっぱらマワシをつけるようになった。大相撲を引退して3年、相撲競技人生27年を経験してきたが、今ほどマワシが自分の体の一部になっている感覚を感じた事は無い。現役時代は自分を見つめるといつ余裕などなく、ただひたすら勝負に勝つことばかりを考えていた。マワシは身に付けるだけで体全体のバランスが整い、できるだけ最大限の力を引き出すきっかけを作ってくれるのだ。これは着物の帯と同様で、昔の日本人実生活を通して体で覚えた知恵であり財産なのだ。その恩恵を受けて感謝の気持ちを持って講座を行うことで、来てくださる方々にも共感していただける、私自身が感動していないと会は成り立たないのである。

さて、講座が始まる時間が近づくにつれて、少しずつお客様が来られた。OfficeOōiwatoのチラシを毎回配っているが、現役時代の写真も載せている。当時は150キロもあったので今の私とは当然別人のように見える、来られる皆さんはわかっているものの、念のため同一人物かどうか聞いてくるのが面白い。それは髷もついておらず、何10kgも痩せれば確認してしまうはずだ。そんな感じで、のっけから不思議な世界に誘うかのように講座は始まる。

 まず初めに、同一人物であることを証明するために、現役時代の取り組みを見ていただいた。時間前の塩をまいている時から拍手が起こる、そして取組で勝った瞬間ももう一度大きな拍手をして下さった。照れ臭いようで、それはとても嬉しい。

次に番付表をお配りし、簡潔に大相撲の世界を説明する。ちょうど新番付の発表が終わったばかりだったので、最新の情報をお伝えすることができた。番付表は居酒屋などでよく見かけるのだが何が書いてあるのか、またどういう見方をすればいいのかなど詳細までわかる人が少なかったなので、しっかりと説明したら大変関心を持っていただいた。

そして私の講座は、お話だけでは終わらない。今度は実際体を動かして体験をしていただく。話だけではどうしても飽きてしまうし、相撲の凄さが伝わりにくいからだ。頭と体を使ってリフレッシュをしてもらおうというのも狙いだ。    まずは蹲踞(そんきょ)から。相撲経験者でも、いきなり蹲踞という文字を書けと言われても書けないだろう。また、なぜそういう動作をするのかも教えてもらった人はいないはずだ。まず蹲踞という文字に注目してもらい、漢字の成り立ちに注目してもらう。足偏に尊いと居るというこれらから連想できるのは、とにかく足が重要であるという事、下半身の安定なくして蹲踞はできない。肩の力を抜き、バランスよく行うことでお臍の下の丹田あたりが中心になり、腑に落ちる感覚になることで初めて気持ちが整い、蹲踞の所作の本来の意味である対戦相手を敬うということにつながるのだ。

 次に塵手水の紹介に入る。神社などの手水場のように体を清め、それと同時に相撲では正々堂々戦うという意思表示を表す所作である。もう一つ重要なポイントがあり、この動作を行うことで体全体のバランスが整い、精神も整う。この大きく2つの意味をなす塵手水は、私は講座で特に力を入れている。代表者一名に前にに出てきてもらい、皆の前で塵手水を行ってもらう。そしてやる前と後で、体の変化を直に見てもらう。そこには決してやらせはなく、体の奇跡が起こるので、ますます見てる人は相撲に興味を持ってくれる。

その熱量をそのまま四股の動作につなげる。四股はとても繊細で、やり方一つで体の薬にも毒にもなり得る。人それぞれに合ったレベルで行わないと怪我につながるので、まずは私が経験を積んだ四股を披露する、その後初歩的な四股を指導させていただいた。足はそんなに上げず、腰も深く下ろさないほどよい刺激でも、十分に効果があることをわかっていただけた。

最後はスリ足。現代ではほぼ見かけないナンバという手足共に同じ方から動かすようにしてもらい、徐々に足の間隔を開いて、手は押す構えをしてもらう。やはりこれもやり慣れていないとなかなか難しい。ほんの数歩スリ足しただけで、皆さんは額に汗がにじみ出ていた。

ラストに質問の時間を少し設け、あっという間の一時間の講座は終了した。積極的に参加してもらい、たくさんの質問が飛び交かったことで、私自身も大変充実した時間を過ごすことができた。この講座が実現できたのも私一人の力では到底無理だった。まず開催する場所の確保、そして実現を後押ししてくれるサポートがなければできなかった。今回この南センターの方には大変お世話になった、綿密な打ち合わせを行っていただき、宣伝にも力を入れてくださった。ギリギリになってわかったDVDの映像の不具合にも迅速に対応してくださっておかげで、映像を見せることができ、会の流れを作ることができた。こうして最初から最後まで盛り上げていただいたおかげで、私は堂々と胸を張って講座をすることができたのである。

 この場をお借りしあらためて感謝の気持ちを申し上げたい。こうしたご縁を大切にしながら、これからも相撲の魅力可能性の大きさを広めていきたいと思う。

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