1月場所を振り返る

かなり時は経ってしまったが、一月場所は貴景勝が3度目の優勝を果たして幕を閉じた。大関としての責任はもとより、相撲協会の面目を果たしたといっていい。成績は12勝だが、星勘定以上の価値のある優勝だ。その内容からして、私は横綱に昇進させても良いと思う。しかし問題は来場所からだろう、十分な実力を持ってしての余力を残した優勝なら話は変わるだろうが、たたでさえ一人大関としての角界最高位の者として孤軍奮闘したことで、精根尽き果てるギリギリの状態であった。肉体的にはもちろん、精神的な負担は相当なものだろう。それを1ヶ月後にまた繰り返すなどと言うのは容易ではない。気持ちを落ち着けたくても、周りがそれを許さない。治したい体の回復も3月まで間に合うか・・・。それに誰が優勝してもおかしくないという幕内の土俵である。2場所連続優勝争いに絡むのは容易ではない。番付と言うものがもはや意味をなさないこの時代、体調さえ本番にうまく照準を合わせれば誰もが狙える時代になってしまったが故に、貴景勝が先場所の優勝の疲れが残っている間にかっさらってやろうと息巻いている力士はたくさん出てくるだろう。無論しっかりと相撲の動きも研究されているしかなり厳しいといった感じだ。

したがって、来場所三月大阪で、貴景勝が優勝して横綱になるかと問われれば、私はないだろうと答える。先述した疲労の蓄積もそうであるが、先場所の相撲内容にも引っかかる点があったのだ。貴景勝といえば鋭い立ち合いと一気の出足が特徴。それに加え、体を上下に自由自在に動かし、下から上に押し上げることができる力士であった。それが徐々に変化してきているのが皆さんお気付きだろうか?

上下の動きが最近見られなくなり、その代わり左右の動き、「いなし」が目立ち始めた。これを解説者によっては、「攻め方のバリエーションが増えた」などと言う人間もいるが私から言わせればとんでもないことである。上下から左右の動きの変化は、下半身の衰えを表している事象なのだ。対戦相手は貴景勝の出足こそ一番気をつけなければいけないと考えてくる、しかし思ったほどの出足がないと予想が外れてしまい、そこに考えもしなかった左右のいなしにまんまと引っかかってしまうのだ。小手投げもそうだが、想定外の動きに対応できずに負けた力士が多かったのだ。これは逆に言うと貴景勝の周りの力士たちに新たな「作戦の引き出し」を与えてしまったことになる。完全な衰えではなく、何らかの怪我か何かの不調でたまたま本来の相撲が取れなかったとしても1ヶ月ちょっとで、元に戻せるというのは考えにくい。強烈な当たりよりも、いなしの方が対策する側からすると楽なのだ。

そういうわけで来場所は別の力士が優勝することになると予想させていただく。貴景勝に関しては、綱取りが白紙になるだけでなく、休場の可能性もあるかもしれないと思う。

こういったことを書いていることをやがて本人が目を通し、「何この野郎!てめぇに言われる筋合いはねぇ!」と発奮してもらうのが私の一番の狙いである。相撲界を離れた「よかた」(=一般人という意味)に言われたら、カチンとくるだろう。それをエネルギー源にしてくれたら幸いである。

最後に、近年大相撲ネタはすっかりスポーツ新聞では取り上げられなくなってしまった。昔はスポーツ新聞の一面を飾っていたのに大変寂しく思う。代わりに週刊誌で相撲ネタをよく見るようになったのだが…。ああいうのを読んで思うのは、世の中いかに嘘で塗り固められているかということだ。事実でないことがたくさん書いてある。少しの事実も存在するが、そこに付け加えてくる付加価値のような憶測があまりにもおかしく、モテない男子の妄想癖のような内容なので笑えてくるのだ。現実にそういった記事を間に受ける読者がいるのだから成り立っているわけで、いかに今の時代の人間のレベルが低いのかが垣間見れる。

もっともそんなのにターゲットにされること相撲界自体にも問題があるのだ。今のままだと、ラグビーなどに話題をかっさらわれてしまう。これはどげんかせんといかんばいね。

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